彼とは、家の近くの神社にお参りに行った。
“今年こそ、本当の幸せを手に入れられますように”
手を合わせ、そう心の中でつぶやいた。
彼は何をお願いしているのかはわからないけれど、こうしてふたりで初詣に来られることが、素直に嬉しかった。
お正月が過ぎると、また普段の生活が始まる。
出会ってから、半年が過ぎているけれど、相変わらず何の進展もない。
全くアクションがないことにレミはイラついていた。
これに関しては、ただの誘いとは違うので、彼からアプローチをしてくるべきだ、とレミは思っている。
そんな複雑な心境がメールにもつい現われてしまい、そっけない返事を返してしまう。
このままだと何も状況は変わらない、と考え、カウンセラーの半沢さんに相談することにした。
半沢さんは、いつもの包み込むような笑顔でレミを出迎えてくれた。
「それで、川村さんとはうまくいっているの? 」
さっそく、本題に入る。
「はい。うまくいっていると思います」
「よかったじゃない! でも、レミさんは、彼が何もアクションを起こしてこないことに悩んでる。そうでしょ!? 」
「さすが半沢さん! 何で分かるんですか? 」
「あなたの表情と、彼の性格を知っていれば、長年の経験で分かるわよ。
これは来月のバレンタインが勝負ね。大丈夫。私から川村さんに話しておくから」
「すみません、よろしくおねがいします」
半沢さんと話したことで、心がスッキリした。
こういうカウンセラーとの出会いも、縁あってこそだ。
本当に、ここでよかった、と心からレミは思った。
2月14日、バレンタインデーはお互い仕事で会えなかったのでその週の日曜に会うことになった。
本当に彼はプロポーズをしてくれるのだろうか、
そう考えると不安で仕事が手につかなくなることもあった。
でも、私はどうしても彼と結婚したい。
今はその気持ちが風船のように、日に日に膨らんでいっている。
会う前の日、コスメショップでローズのバスソルトを買った。
何かの雑誌に「ローズには媚薬効果がある」と書いてあったのを思い出したのだ。
入浴剤にしては¥3800という値段は高かったが、願掛けとして何かしたかった。
その夜、ローズの優雅な香りに浸りながら、ゆっくりとバスタブで体を温めたおかげで、ぐっすりと眠ることができた。
その日はあいにくの大雨だ。
とっておきのワンピースだったのでパンプスを履くつもりが、やめて長靴にした。
どこか、遊びに行こうと話していたけれど、結局車で家に迎えに来てくれて、彼の家でゆっくりしよう、ということになった。
〜Vol.12に続く〜
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