それから毎日、夜は電話でお互いのことを話す。
その時、ふたりは何度も「ありがとう」と言い合った。
出会えたことに感謝するという意味で・・。
彼は名古屋に住んでいるので、遠距離になるのは覚悟していた。
でも、彼がふたたび横浜に来たのは、初デートから一週間後。
「どうしても、1時間だけでもいい。」
と、仕事が終わってから新幹線で逢いにきて、食事をしてそのまま名古屋へ戻った。
次の日曜日は、山手の港の見える丘公園で、ふたりの未来を語った。
どういう人生を送っていきたいか、とお互いのビジョンを話し合えること。
それは、ミワには現実的であって、そして綿菓子の雲の上を歩いているようなふわふわとした夢心地の気分だ。
ふたりは、白の外壁と赤い窓枠がお城のような洋館の喫茶店に入った。
アンティークの家具や暖炉、木で出来た扉など、まるで童話の世界に迷い込んだような感覚が、若い女性に人気の店だ。
ミワは、初めてここに来た。
いつか雑誌で見て、好きな人ができたら来たいと思っていた場所。
そこに、この前で出会ったばかりの人といる。
イチゴショートとチーズケーキをふたりで分け合うことさえ、何も言わずにしている。
まだ、出会って3回目とは思えないほど、ふたりはリラックスしていた。
周りから見れば、1年以上付き合っている恋人同士のように見えるだろう。
店を出て、山手の緑の中をふたたび歩く。すると、彼がそっとミワの手を握った。
そのまま、初めて何もしゃべらずに、前だけを見て歩く。
鼓動が高鳴り、ミワの目にはじんわりと涙が浮かんだ。
風景がぼやけて、目の前が見えない。
ミワは、彼の引く手を頼りに歩いた。
〜
運命のひと vol.8(最終回)に続く〜
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